入局者の声

東京医科歯科大学 呼吸器外科教室出身で活躍している先生からのお話です。

東京医科歯科大学は出身大学に関係ない開かれた大学です。当教室も21名中15名が全国各地の大学出身者です。
出身大学やGender関係なく、本人のやる気と外科への熱い気持ちがあれば、伸ばすことができる環境に心がけています。

当教室出身者の声をお届けします。先生方に具体的な話を聞くこともできますので興味ある先生は気兼ねなく医局まで連絡をください。

末吉 国誉先生

(東京医科歯科大学大学院生、東京医科歯科大学 2016年卒)

はじめまして。2018年入局の末吉と言います。出身は沖縄県ですが、大学から東京に出てきたので、こちらでの生活も気づけば随分長くなっています。
今でこそ呼吸器外科に所属していますが、学生のころは基礎研究に憧れを持っていたこともあり、なんとなく内科に進もうと思っていました。初期研修1年目でも当院の神経内科や膠原病内科などをローテートし、それなりに充実した楽しい研修を積んでいたと思います。ところが初期研修2年目に一転、外科系を志向することとなりました。研修先の三楽病院で、外科と産婦人科を研修し、その面白さに気づいたためです。外科系はずっと手術ばかりしている技術職人のイメージがありましたが、実際にはそうではありません。術前の鑑別診断と手術要否の決定、周術期の全身管理と(特に呼吸器外科では)気道管理、術後の患者家族とのコミュニケーションや退院支援。想像以上に総合的な能力が必要とされる分野でした。
その後は、気道と血管の扱いの習熟を必要とする呼吸器外科にやりがいを感じ、この医局に入局しました。医局員の希望を最大化しようとしてくれる医局で、今は希望通り、大学院で呼吸器腫瘍の基礎研究をさせてもらっています。解剖学的なイメージをもって悪性腫瘍の解析が行える点は、外科ならではの強みだと思います。以上個人的な経験談でしたが、私としては、内科を目指している方にも一度は外科という選択肢を考えてみてほしいなと思っています。

浅川 文香先生

(東京医科歯科大学 呼吸器外科 助教、東京医科歯科大学 2011年卒)

私が呼吸器外科に進んだきっかけは学生実習および研修医のときに入らせていただいた手術でした。元々癌治療に関わりたいと考えていましたが、肺という臓器の美しさや血管、気管支処理の鮮やかさは勿論のこと、何よりも自分たちの手で病気を治せることに魅力を感じました。
私は入局を考えている折に妊娠したので入局を拒まれるのではないかと正直不安でしたが、当医局に拒否する雰囲気は全くなく、病院にいられる時はしっかり診療に当たるようにご指導・ご配慮下さいました。良い意味で忖度なく手術や論文、研究指導を受けられる一方で家庭の緊急時には柔軟に対応して下さり、伸び伸びと学ばせていただいたお陰で呼吸器外科専門医や学位を最短年数で取得出来ました。
呼吸器外科治療や研究に興味があり、なおかつ家事育児に限らずその他プライベートも欲張る先生方のお越しをお待ちしています。

中島 康裕先生

(東京共済病院 呼吸器外科 医長、香川大学 2011年卒)

私は東京医科歯科大学で初期研修を履修した際、偶然呼吸器外科を2ヶ月ローテーションしました。当時は内科志望を公言して全く勧誘されなかった私が、当医局の雰囲気と呼吸器外科の世界に魅了され、1年後に入局希望を届け出し、医局長を驚かせるまで、何があったのか。思い返すと、2つの思い出があります。
一つ目は、術中やカンファレンスで、修練医の意見が尊重され、教育的に議論がなされていた事です。若手外科医は駒として扱われるイメージしか無かった私は、立場関係なく、個々の意見を尊重し合う風土に衝撃を覚えました。
二つ目は、礼儀知らずの研修医だった私が、飲み会で指導医の先生がたに「 術中“俺に代われ”って思わないんですか?」という質問をした時のこと。「それじゃ意味ないだろう」と豪快に笑い飛ばし、修練医の力を引き出し、専門医と遜色ない手術を実現させるのが指導医の役割だと話す、その気概に、「ここで学びたい」という思いを強くしたのを覚えています。
私の入局後のキャリアは、JAとりで総合医療センターにて外科研修の後、東京医科歯科大学・武蔵野赤十字病院などで呼吸器外科手術を修練しました。7年目に胸部悪性腫瘍の病理学に興味を持ち、東京医科歯科大学大学院に入学、がん研究所・がん研有明病院 病理部で研究を行い、中皮腫の病理診断をテーマに博士号を取得(10年目)、その間に呼吸器外科専門医・気管支鏡専門医を取得しました。2023年現在は東京共済病院に勤務し、単孔式などの新たな術式に挑戦しつつ、病理学研究の継続を行なっています。
東京医科歯科大学呼吸器外科は、関連病院含め、アットホームな雰囲気で、懐の広い指導医の元、主体的に学ぶ事ができる、というのが最大の魅力ではないでしょうか。若手が執刀医となることが難しい大学病院で、外科研修を終えた4年目が、1年で完全胸腔鏡下肺葉切除を完遂できるようになる教育体制が敷かれているところは、多くないでしょう。豊富な症例数と、確かな手術技術に裏打ちされた指導医の存在が、それを実現していると感じます。これを読んで下さっている先生も、当科の門戸を叩いて頂き、ともに切磋琢磨できる日を心待ちにしています。

瀬戸 克年先生

(愛知県がんセンター 呼吸器外科、滋賀医科大学 2010年卒)

私は2010年に滋賀医科大学を卒業後、都内の病院で初期研修を行い、東京医科歯科大学呼吸器外科に入局いたしました。入局後は東京医科歯科大学の他、武蔵野赤十字病院、愛知県がんセンターなどで研修し、現在は愛知県がんセンター呼吸器外科に勤務しています。
初期研修医の修了が近づき、診療科選択を迫られた際に、私は体幹の臓器を扱う外科系診療科を専門にしたいと考えました。呼吸器には学生時代から興味があり、最終的に呼吸器外科を選択しました。
私が思う呼吸器外科の魅力は、術前に手術シミュレーションをすること、それをディスカッションすることです。呼吸器外科には部分切除のような比較的短時間で終わる手術から、大血管の置換を要する手術や再手術のように長時間かかる手術まであります。病変の位置、浸潤範囲など、一つとして同じ症例はなく、すべての症例で術前の戦略が求められます。自分なりに考えた戦略を先輩や同僚、後輩医師と共有し、指導を受けることや、術中所見で事前に考えた戦略が正しかったかどうかの答え合わせをすることで、一つ一つの症例を深く学ぶことができます。先輩後輩関係なく、他の医師と方針についてディスカッションをすることで、新たな着眼点を得られたり、自分には考えられなかった方針を聞くことができたりします。私は呼吸器外科を専門として約10年経ちますが、今になっても学ぶことの多い、奥の深い診療科であると感じる日々です。これが私の考える呼吸器外科の魅力です。
東京医科歯科大学呼吸器外科の魅力は、充実した手術の指導体制と、やりたいことをできるだけ実現させようとしてくれる器の大きさにあります。手術指導体制については、卒後の年次に応じた適切な症例の割り振りがあります。専門医取得後は通常の肺葉切除に限らず、気管支形成、肺動脈形成、血管置換などの拡大手術でさえも、指導を受けながら術者として経験できます。大学病院以外での研修では、関連病院の枠を超えてがんセンターなどの症例の多い施設での研修を勧めてくれたり、研究目的の海外留学も希望すれば実現させてくれようとしたりします。他の医局を知りませんが、若手医師の希望であっても、できるだけ叶えようとしてくれる度量の大きさが感じられます。
現在私は愛知県がんセンターで診療を行っていますが、これまで大学病院で学んできたことを基に、より良い診療、手術を目標として患者さんに最適な治療方針を考え、提供できるようにしています。当施設には私以外に同門の医師はおらず、緊張感を持って日々診療に臨んでいます。また、臨床のみならず大学時代からの研究の発展を目標として毎日を過ごしています。
遠方からにはなりますが、呼吸器外科を考えている方は、是非我々のメンバーとして一緒に高めあいましょう!

今井 紗智子先生

(青梅市立総合病院 呼吸器外科 医長、秋田大学 2007年卒)

学生の頃から外科系に興味がありましたが、周りに女性外科医は少なく、「女性で外科医になるならプライベートは諦めたほうがいい」という人もおり躊躇していました。しかし、呼吸器外科での実習中に「手術とドレーン管理さえしっかりすれば、他の外科よりは自分の時間が持てる」との言葉に女性外科医でもプライベートを諦めない日を夢見て外科医として歩むことにしました。卒後は都内の市中病院で初期研修及び外科後期研修をし、卒後6年目に東京医科歯科大学呼吸器外科へ入局をしました。大出血をきたす手術、10時間を超える大手術、術後に人工心肺が回るなど大変な症例もあり、あの言葉を疑った日もありました。しかし、夜間休日の緊急手術は少なく、予定手術はほぼ日中の時間内に終わります。大学での修練は少し忙しいですが、関連病院での修練は確かに自分時間が持てる。そんな日々を過ごしながら卒後12年目に呼吸器外科専門医を取得し、大学院では肺癌の接着分子P-cadherinをテーマに博士号を取得しました。その後、産休育休を経て、現在は青梅市立総合病院で周りのサポートと理解を得ながら、ほぼフルタイムで仕事と子育てを両立しています。あの言葉は間違っていなかったと実感しております。
医科歯科大学の修練では市中病院ではなかなか経験しない手術をたくさん経験させていただき、研究会でいつも「こんな症例も、さすが医科歯科」と。今では、大学なら手術してくれるかもと難しい症例をお願いしています。さすが医科歯科と思いながら毎度感謝しております。胸腔鏡やロボット手術はもちろんのこと、拡大手術においても豊富な症例数は東京医科歯科大学呼吸器外科の魅力の一つと感じます。また、指導医の先生方や医局員同士の距離が近く、カンファレンスで意見や質問がしやすい雰囲気も魅力の一つです。そのような雰囲気は自分のキャリアやライフプランを相談する場合にも非常に感じられます。ライフイベント、大学院、研究など、悩みがあれば気軽にアドバイスをくれる指導医や先輩がいたり、実際にこうしたいなどの要望を相談すればじっくり考慮してくれます。女性だから男性だからを強調したくないところですが、やはり女性はライフイベントのたびに人生、働き方の見直しする場面があるので、自分の今後のキャリアを相談できる環境は心強いです。もちろん男性の皆さんも働き方を見直したい際には必ず耳を傾けてくれます。
胸腔鏡手術が肺手術の完成形かと思いましたが、最近はロボット手術や単孔式手術など進歩は止まりません。皆さんと議論しながら患者さんにとって最良の手術が選択できる日を楽しみにしています。

籠橋 千尋先生

(武蔵野赤十字病院 呼吸器外科 部長、山梨大学 2007年卒)

私は臨床研修終了後、2009年に東京医科歯科大学の呼吸器外科学講座に入局しました。
大学病院と医局の関連病院で修練を積んだのち、専門医と博士号を取得して、2018年から関連病院の呼吸器外科部長職として勤務しています。
呼吸器外科の魅力は、肺という生存に直結する臓器を扱うことと、単一臓器であるにもかかわらず、肺、大血管、気管、気管支、縦隔、横隔膜、胸郭と手術で触る組織が多岐にわたっていて、手術のバリエーションが多いことだと思います。手術難度も幅が広く、初期研修終了直後に執刀できるものから、10年以上修練してようやくできるようになる手術まであって外科医として成長し続けられることも(一人前になるまでに時間がかかるということでもありますが)、魅力であろうと思っています。
東京医科歯科大学の医局には、とくに自由闊達な雰囲気があると感じています。出身大学による偏りがなく、出身や性別でキャリアに制限を受けることが少ないです。呼吸器外科学講座が独立してからまだ十数年で、医局規模が小さめであるメリットだと思いますが、各々の意見を聞いて、個々の希望するキャリアプランに応じた修練や学位取得へのチャンスを提供しようとする気概を感じます。私自身も、現職の在職中に産休・育休を取得しましたが、その際に関連病院の手術や診療に支障が出ないよう、医局にフルバックアップしていただいて無事復職することができました。
同じ仲間として修練していても、それぞれ目指す外科医像は違いますし、実際に辿るキャリアも異なります。個々に、そのときの状況に応じて相談していけるのはメリットだと思います。手術が上達して、呼吸器外科医として一人前になりたいという思いをお持ちの方は、どなたも歓迎いたします。どのような外科医になりたいのか、ぜひ話してみてください。入局した皆さんと、一緒に手術に入る日を、楽しみにしております。