外科手術実績

呼吸器外科学講座新設された2010年より手術件数は増加し、年間300件以上の手術を呼吸器外科専門医5名のもと行っています。
胸腔鏡手術は全手術の90%、原発性肺癌の80%以上で行っています。

疾患別手術件数推移

外科手術の方法

手術で切除する範囲(臓器をどれだけ取るか)と手術を行うためのアプローチ方法(創の大きさ)があります。

当科では“患者さんに優しい手術”を心掛けており、同じ質の手術結果(手術による合併症や治療成績)が得られるのであれば患者さんの身体への負担が少ない“低侵襲手術”を基本としています。

しかし、病状が進行していた場合や他院で切除不能とされるような進行がんに対して、周囲臓器の合併切除や血管・気管支形成などの“高難度な拡大切除”、術前抗癌剤放射線治療を組み合わせた“集学的治療”を得意としており、積極的に数多くの手術治療を行っています。

1.胸腔鏡下手術による低侵襲手術

原発性肺癌、転移性肺腫瘍、重症筋無力症、縦隔腫瘍・気胸など呼吸器外科で行うすべての疾患を対象に2010年開設当時より“全例胸腔鏡手術”を基本にしています。しかし、局所進行癌や再手術の場合は15-30cmほどの大きな傷で肋骨を切断する手術(開胸手術)になる場合もあります(全手術の9割は胸腔鏡下手術です)。

胸腔鏡下手術は創部が小さいため痛みは少なく手術後の回復が早いために合併症も軽減できます。通常は3~4cm・1cm・1cmの3か所で手術(3port)を行っていますが、近年行われている“単孔式(Uniport)手術”“ロボット支援下手術”も行っています。これら3種類の胸腔鏡下手術(3port、単孔式(Uniport)、ロボット支援下手術)それぞれに利点・欠点がありますが、手術後の痛み・合併症発生率に差はありません。最も大切なことは、病巣を“安全”に“完全”に取り除くことですので主治医と十分相談して決めていきます。

  • 手術創

  • 手術創

2.局所進行肺癌

他病院で手術できないと言われるような切除により根治が難しい局所進行肺癌は、通常の肺葉切除術だけでは取り切れずに、気管支・肺動静脈の切除・再建や周囲臓器(心血管、肋骨・胸骨などの胸壁、椎体、横隔膜など)を肺と一緒に切除する場合があります。患者さんによっては手術前治療として抗癌剤・放射線治療や分子標的薬治療・がん免疫療法などを施行後、手術を行っています。

当院ではこのような切除不能とされるような高難度局所進行肺癌に対しても心臓血管外科・整形外科・消化器外科・形成外科・頭頚部外科をはじめとする外科系領域協力の元、積極的に切除を行ってきており、数多くの経験があります。

2010年~2022年

気管気管支形成術 69例
肺動脈形成術 46例
術前抗癌剤放射線治療後手術 51例
胸壁合併切除 61例
肺尖部肺癌 23例

局所進行肺癌へ術前抗がん剤放射線療法

3.全胸膜摘除・肺剥皮術+術中温熱シスプラチン灌流療法

当院が当初より行っている治療法です。手術後は局所再発を起こしやすいために腫瘍が存在する胸膜をすべて切除したのちに引き続き抗腫瘍効果があるシスプラチンという抗癌剤をさらに42度という殺腫瘍細胞効果のある温度に温め1時間の胸腔内灌流を行います。非常に良好な治療成績になっています。