縦隔腫瘍

“縦隔”とは左右の肺の間のことで、胸腺、心臓、食道、気管などがあります。

縦隔には腫瘍や嚢胞ができることがあり、それぞれ縦隔腫瘍・縦隔嚢胞と呼びます。縦隔腫瘍は呼吸器外科手術の6%で、そのうち胸腺腫が37%と最も多く、嚢胞性腫瘍(胸腺嚢胞、心膜嚢胞、気管支原生嚢胞など)22%、神経原性腫瘍が9%、そのほかに胸腺癌、悪性リンパ腫、胚細胞腫瘍などがあります。

CTやMRIなどの画像診断で手術の必要性を判断し、手術の場合には診断・治療を兼ねて摘出することが多いです。抗がん剤治療などを優先する腫瘍が疑われる場合(進行性胸腺腫瘍・悪性リンパ腫・胚細胞腫瘍など)には、手術前に腫瘍の組織検査を行い、治療方針を検討する場合があります。

縦隔腫瘍は聞きなれない腫瘍だと思いますので担当医と十分話し合って治療方針を相談してください。

胸腺腫瘍

胸腺とは縦隔のうち心臓と胸骨の間(前縦隔)に存在する組織で、血液の中のTリンパ球を教育する組織です。思春期を境に退縮し、大人では周囲の脂肪組織区別がつかなくなります。この胸腺にできる胸腺腫瘍には胸腺腫・胸腺癌があり、多くは無症状で発見されます。大きく進行すると周囲の心臓・大血管・肺などへ腫瘍が入り込み(浸潤)、手術前後に抗がん剤や放射線治療を行うこともあります。
胸腺腫は重症筋無力症の特殊な神経の病気を併発しやすく、胸腺腫を含む胸腺をすべて切除する拡大胸腺摘出術を行います。

胸腺癌は胸腺腫よりも稀な病気で周囲の臓器(心大血管や肺など)へ浸潤傾向が強く抗癌剤・放射線治療・手術を組みわせた集学的治療を行います。

*病期分類(正岡)

  • I期:腫瘍が肉眼的かつ顕微鏡的に被膜に囲まれている

  • II期:腫瘍が被膜を超えて周囲脂肪や縦隔胸膜に浸潤する

  • III期:心膜・肺・大血管への肉眼的浸潤

  • IV期:a.胸膜または心膜播種
       b.リンパ行性または血行性転移

前縦隔腫瘍(胸腺腫)

前縦隔腫瘍(胸腺腫)

神経原性腫瘍

神経は細い神経線維の束で、胸腔内には横隔神経、迷走神経、交感神経、肋間神経と様々な神経があり、腫瘍ができることがあります。多くは良性腫瘍ですが稀に悪性のこともあるので診断を兼ねて外科切除することが多いです。切除する場所によっては神経障害を伴うことがありますので担当医と十分相談してください。

縦隔腫瘍(神経性腫瘍:神経鞘腫)

縦隔嚢胞

縦隔嚢胞

胸腺、心膜、気管支などから発生する体液が入った袋(嚢胞)で、胸腺嚢胞、心膜嚢胞、気管支原生嚢胞などがあります。主に良性腫瘍であるため、嚢胞が小さければ手術をせずに経過観察を行う場合があります。徐々に大きくなる場合や嚢胞によると考えられる症状(動悸・つっかえ感・呼吸苦など)が出現する場合、手術を行うことがあります。低侵襲手術が可能な場合が多いです。

縦隔嚢胞(気管支原生嚢胞)